原点との再会

子供のころ、いつも聴いていた
お気に入りのレコードのシリーズがありました。
オーケストラの演奏と
その曲目に合わせた絵本の朗読のレコードで
レコードと絵本が対になって
一冊の図鑑のような箱に入ったものが
13巻セットになっていました。

そのレコードと絵本は
色褪せない鮮やかな記憶となって
私の中にずっと残っていたのですが
12年ほど前、実家の荷物を整理したときに
レコードだけ残して絵本や箱が処分され
絵本は本当に
記憶の中だけのものになってしまっていました。

レコードだけを何度も聴くうち
どうしてももう一度絵本をみたくなって
探し回っていたのですが
発売されたのはもう50年も前、
新しいものは作られていないようで
オークションなどでも落札済みのものしか見つからず。

そして、探し始めて数年。


廃園になった幼稚園に
新品のまま50年忘れ去られていたものを
安価で譲っていただける
というご縁に恵まれました。
そんな美しい話があるでしょうかと
頬をつねりたくなるほどのご縁です。


今日、手元に届いたその外箱は
経年劣化のために
段ボールが手で破れるほどでしたが、
中身は新品。
アリス館の収納用の箱に入った
懐かしいこの背表紙の並びに
感動を抑えきれません。

しかもしかも

アトリエのチェストの下に
計ったようにぴったりと収まりました。
私がロマンチックな小説家だったなら
やっと会えたね
と言いたくなったでしょう。

私が気に入って繰り返し聴いていたのは
1.くるみ割り人形
2.ピーターと狼
6.真夏の世の夢
とくにこの3つなのですが
どの絵本も、開いた瞬間
記憶の箱のふたが開けられたように
色の思い出が洪水になって甦ってきます。

どの本にも、お気に入りのページがありました。
全部の絵本の全部のページをお見せしたいほど
それぞれ違う画家さんによって
素晴らしく美しい絵が描かれています。


一番衝撃的だったのは
これらの絵本の記憶が
数十年経った今の私の創作活動に
実に大きな影響を与えている
と気づいたことです。
全身の細胞が
ワクワクしているのを感じています。

昔から
くるみ割り人形の音楽を聴くと
とくに思い入れがあるわけでも
悲しいわけでも
なんでもないのに
なぜか涙が出てくるのは
このレコードのせいなのかもしれません。

そして、おりしも
くるみ割り人形は
今年のバレエの発表会の演目で
娘も一生懸命練習中。
そんなタイミングで
私の手元に来てくれたことにも
偶然とは思えない何かを感じます。

この絵本を明日読む約束をしていますが
娘もこのレコードのシリーズを
気に入ってくれるかどうか
とても楽しみです。


machiron

コメント

人気の投稿